奨学金の返還が厳しいと感じた時にやるべきこと

学生時代、卒業後に毎月数千円から3万円ほどの奨学金の返還をすることが厳しいとは、想像しきれなかったことでしょう。現実は、うまく就職できなかったりしなかったり、就職しても思うような職場ではなく退職したり、転職しようとしても転職までに時間がかかったり、体調を崩してしまったり……奨学金の返還どころではなくなってしまうケースもたくさんあります。

奨学金返還の延滞の代償

日本学生支援機構の奨学金返還の延滞が始まった一番大きなきっかけは「収入が減った」というものです。

日本学生支援機構の奨学金の場合、3ヵ月以上延滞すると、個人信用情報機関に「延滞の事実」が登録されます。個人信用情報機関に延滞者として登録されるということは、「経済的に信用できない人」だとみなされることです。

「延滞の事実」という登録が抹消されるのは、全額返還を終えてから5年後。転職などに成功し、どれだけ収入が増えたとしても、長期間に渡って「経済的に信用できない人」とみなされることになります。新たにクレジットカードの発行ができなかったり、自動車ローンや住宅ローンなどのローン契約を結べなくなる可能性が高くなったり、場合によっては現在発行されているクレジットカードが利用停止になったりします。

奨学金の返還が厳しい中でも延滞者にならないためには何をしたらいいのでしょうか。

奨学金返還で延滞者にならないためには

奨学金の返還が厳しいと思ったら、減額返還制度を適用できないか確認をしてみましょう。

減額返還制度は、災害や傷病、経済的理由により奨学金の返還が困難な場合に適用できます。適用すると、毎回の返還額を2分の1に減らすことができます。

経済的理由により適用されるための要件

  • 1)収入が給与・賞与のみである場合:年間収入金額が300万円以下であること
  • 2)収入に給与・賞与以外を含む場合:年間所得金額が200万円以下であること

扶養者がいる場合には、扶養者1人あたり38万円を控除できます。例えば妻がいる場合、1)の場合には338万円以下、2)の場合には238万円以下となります。

また、親などへ生活費を仕送りしている場合にも原則として1カ所につき38万円を控除できます。

収入や所得は、所得証明書や市県民税(所得・課税)証明書、住民税非課税証明書などで確認できます。なお、証明書に記載されているのは前年の収入や所得です。前年は要件に当てはまらなくても、今現在失業していて要件に当てはまる場合もあるでしょう。その場合には、離職票や退職証明書なども必要になります。

収入がなくても適用できない人

減額返還制度の申請や審査の時点で延滞している人は、制度を適用することができません。延滞者が減額返還制度を適用させるには、「延滞の解消」つまりそれまでの延滞額全てを返還することが必要です。

審査などに時間がかかることも考えられます。適用希望月の2ヵ月前から申請できるため、早めに申請することを心がけましょう。また、毎回の返還額が減額されるだけで、総返還額は減りません。毎回の返還額が減額された分、返還期間は長くなります。

また、2017年以降に第一種奨学金に採用されている場合には、3分の1に減額することも可能です。

もう1つの方法として、返還期限猶予制度の適用もあります。返還期限猶予制度は、災害、傷病、経済困難、失業などにより返還が困難な場合に適用できます。

「経済困難」の要件は減額返還制度とほぼ同じです。返還期限猶予制度を利用すると、最長10年間返還を停止することができます。ですが、こちらも停止した分、返還期間が延長されます。全く返還できない、という場合以外は減額返還制度をお勧めします。

しつこいようですが、減額返還制度も返還期限猶予制度も、総返還額が減るわけではありません。一時的に毎回の返還額を減らしたり停止したりするだけで、トータルでの返還額は何ら変わりません。ですが、無断で返還をしない「延滞者」ではないため、個人信用情報機関に延滞者としての登録はされません。

奨学金の返還を続けるためには

奨学金の返還に悩まされないためには、しっかり貯蓄をしておくことが重要です。失業時には失業保険(雇用保険の基本手当)を受け取れるとはいえ、自己都合退職の場合には3ヵ月の給付制限があります。奨学金の返還を含めたローンの返済なども含めて滞ることのないよう貯蓄をしておきましょう。

貯蓄を増やすコツは、20代、30代のうちは生活費を増やさないように気を付けることです。収入のある時に生活費を増やすことは簡単ですし、いつのまにか増えているものです。収入のある時にこそ、毎月の貯蓄額を決めて貯蓄をするのではなく、毎月使う額を決め、それ以外は貯蓄をすると当然のことながら貯蓄が増えていきます。

奨学金とはいっても借金の1つです。返還を滞らせると後々の人生まで響くことになりかねないので、延滞になる前に早めに手続きをすることが重要です。なお、個々の事情にあわせて提出書類が異なったり要件が異なったりしますので、実際に適用を検討する際には日本学生支援機構のサイトまたはナビダイヤルで確認してください。

著者情報

人物
氏名 国分さやか(オールスマイル合同会社 代表)
職種 ファイナンシャル・プランナー
専門分野 マネー教育
結婚・子育て中のファイナンシャルプランニング など
保有資格 CFP®、日本学生支援機構スカラシップアドバイザー、
日本FP協会パーソナルファイナンスインストラクター、教員免許第一種