不動産を売却する際にかかる費用とケーススタディ

不動産を購入、あるいは売却するというのは日常的な行為ではありません。一生のうちに2、3度あれば多い方でしょう。それゆえ、いざそういった状況に直面すると、どのような費用がかかるのか、それはどのタイミングでいくらくらい必要なのか、税金はどうなるのか、など、分からないことが多くて不安になるかもしれません。

本稿では、不動産の売却に必要なコストについて、項目ごとにご紹介いたします。

(なお、税制については令和元年6月現在の状況で執筆しています)

不動産売却時に必要となる費用(売却費用)

不動産を売却するにも手数料など費用が発生します。

想定していたよりも手取り額が少ないという誤算が無いよう、売却時に主に必要な6つの費用をご紹介します。

仲介手数料

<売却価格の3%+6万円(消費税別途)>

不動産業者に売却を依頼した場合、一般的には「仲介(媒介)」という形での取り扱いとなります。価格を査定してもらった上で売却価格を決定し、販売、買主との交渉を経て契約となります。仲介手数料の支払い方法として最も多いのは、売却契約時に半金を支払い、決済時に残金を支払うケースです。契約時には買主から売買価格の手付金が、決済時には残代金が支払われますので、余程手付金が少ない場合以外、持ち出し負担は発生しません。

なお、依頼した不動産業者が直接買取する場合、仲介手数料は必要ありません。

印紙代

忘れがちですが売買契約書に貼付する印紙代が必要です。
売買価格によって異なりますが、例えば売買価格が1000万円を超え5000万円以下の場合、1万円の印紙が必要です。

司法書士への支払い

売渡証書の作成費用として、3万円程度の費用が必要です(商慣習の違いによって、必要のない地域もあります)。

また、登記簿謄本記載の住所と現住所が違う場合は住所変更登記が、抵当権等が設定されている場合はその抹消登記が、相続登記が未完了の場合は相続登記が必要です。権利証(登記識別情報)を紛失した場合は本人確認手続き等でプラスアルファの手続き費用が掛かります。これらは売却価格に関わらず一定の金額ですので、売却を決めた段階であらかじめ司法書士に見積もりをもらっておくと良いでしょう。

ローンの完済にかかる費用

売却予定の不動産にローンが残っていた場合、決済までに(もしくは決済と同時に)ローンを完済して抵当権、根抵当権等の担保権を外す必要があります。この手続き自体は司法書士が行いますので司法書士費用の項目で考えるべきですが、金融機関によっては繰上げ完済手数料などの名目で3万円程度の手数料を請求してくる場合があります。これも事前に確認しておいた方が良いでしょう。

測量、境界確定費用

買主が希望した場合や、公簿(登記簿)の地積と現況が大きく異なる場合など、測量を求められるケースがあります。また、隣地との境界が不明な場合などは、境界確定、筆界確定をしなければいけないケースもあります。現地の状況や隣接地の件数、面積の大小などによって金額はかなり変動しますが、30~50万円程度と比較的負担の大きい項目になります。もしも測量が必要な場合、現況測量でいいのか、確定測量が必要なのかなど、よく確認してから話を進めるようにしましょう。

改装、修繕、荷物撤去、解体にかかる費用

建物がまだ利用できる状態だという前提で、買主が改装や修繕を条件に購入するというという場合もあります。また、販売しやすいように事前に改装を進めてくる不動産業者もいます。こういった場合、当然それにかかる費用が必要です。

また、古い家の場合、解体して更地にしてから引渡しをするということもあります。解体までしないにしても、残置物(建物内に残ったいらない荷物)を撤去して欲しいと言われることもあります。

これらはいずれも大きな金額になりますので、売却価格を決める際に引渡し状態についてもあらかじめ決めておいた方が良いでしょう。

以上が、売却時にかかる可能性のある費用です。

では、税金はどうなるのでしょうか。

不動産売却時にかかる税金

不動産を売却した際は、「不動産譲渡所得にかかる所得税・住民税・復興特別所得税」が掛かります。

これは、以下の計算式で税額を導き出すことができます。

①不動産譲渡所得金額 × ②税率 = ③税額

非常にシンプルですね。

ところで、不動産譲渡所得って何?税率はいくらなの?と疑問を持たれたのではないでしょうか。

安心してください。以下でご説明差し上げます。

①不動産譲渡所得金額

これは、不動産を取得(購入)したときにかかった金額(手数料等の経費も含む)(これらをまとめて取得費と言います)と、不動産を売却した金額を比べて、利益が出ているかどうかというものです。厳密には、建物の金額は減価償却によって年々目減りしますので、買った金額がそのまま維持されるわけではありませんのでご注意ください。

取得費より売った金額の方が低ければ、損をしたということになりますので譲渡所得はマイナスとなります。イコール税金はかかりません。なお、不動産譲渡所得のマイナスは他の所得(給与所得など)と損益通算できません(一部特例に該当する場合を除く)。

取得費より売った金額の方が高ければ、その差額が利益と考えられます。この場合、仲介手数料など売却時にかかる諸費用を差し引いてまだ利益が出る場合は、その金額が譲渡所得の金額となります。

ちなみに、買ったときの金額(取得費)が分からない場合や売買契約書、領収書などの書類を紛失して金額を証明できない場合、概算取得費として売却価格の5%を取得費と見なすことができます。

②税率

不動産譲渡所得税の税率は、短期譲渡所得と長期譲渡所得の2つに分類できます。これは、売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えるかどうかで判断します。超えていれば長期、5年以下なら短期となります。相続した不動産の場合は被相続人(亡くなった人)が取得した時期を引き継ぎますので、注意が必要です。

短期譲渡所得の場合は、税率は39.63%(所得税30%、住民税9%、復興特別所得税0.63%)、長期譲渡所得の場合は、税率は20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)、と、倍ほどの違いがあります。

なお、「所有期間10年越えの居住用財産を譲渡した場合の軽減措置」が適用される場合、譲渡所得が6000万円以下の部分は税率14.21%(所得税10%、住民税4%、復興特別所得税0.21%)に軽減されます。6000万円を超える部分は長期譲渡所得と同じ扱いです。

特別控除を受けられるケース

譲渡所得税の計算では、いくつかの特例措置が設けられています。前述した「所有期間10年越えの居住用財産を譲渡した場合の軽減措置」もその一つです。

ここではもう2つ、代表的な特例をご紹介しましょう。

A、居住用財産を譲渡した場合の3000万円特別控除

現に居住している、もしくは住まなくなってから3年を経過する日の属する年の12月31日までに自宅を売却した場合、譲渡益から3000万円控除することができます。特例が適用できるかどうかはいくつかの条件がありますので、利用を検討されている方はあらかじめ適用要件をしっかり確認しましょう。

B、被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例

相続した物件が空き家で、かつ被相続人(亡くなった人)の自宅として利用されていた建物である場合、一定の要件を満たせば3000万円の控除が受けられます。文字数の関係で詳細は省略しますが、耐震改修もしくは解体をして引渡しすることが必要など、特例適用にはそれなりの費用を掛けなければいけませんので、より慎重に適用要件を確認しながら話を進めた方が良いでしょう。

これらの特例が適用できれば、納税額を大きく削減することができます。

不動産売却の具体的なケーススタディ

①自宅を売却するケース

<条件>

■自宅物件
・親の代から住んでいる物件
・取得費不明
・所有期間10年越え
・自己名義
・担保権なし
・境界確定はしていない

■物件売却価格
・5000万円、測量、境界確定を売主負担でして欲しいとの条件で売買

※居住用財産を譲渡した場合の3000万円特別控除が適用できるものとする。

【売却費用】

項目 金額
仲介手数料 1,684,800円
印紙代 10,000円
司法書士費用 32,400円
測量・境界確定 500,000円
小計 2,227,200円

【手取り額計算】

・不動産譲渡所得金額
50,000,000円 - 2,227,200円(売却費用) - 2,500,000円(概算取得費) = 45,272,800円

・不動産所得税
45,272,800円 - 30,000,000円(特別控除) × 14.21% = 2,170,264円

納税後手取り額
50,000,000円 - 2,227,200円(売却費用) - 2,170,264円(税金) = 45,602,536円

②相続した空き家を売却するケース

<条件>

■相続空家
・被相続人の居住用物件
・取得費不明
・所有期間10年越え
・被相続人名義
・担保権なし
・昭和40年築

■物件売却価格
・5000万円
・更地にして引渡しするという条件で売買

※被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例が適用できるものとする。

項目 金額
仲介手数料 1,684,800円
印紙代 10,000円
司法書士費用 250,000円
相続登記費用220,000円含む
測量・境界確定 1,500,000円
小計 3,444,800円

(相続登記費用を除いた金額 3,224,800円)
*相続登記費用は譲渡所得の計算上、売却費用に含みません。

【手取り額計算】

・不動産譲渡所得金額
50,000,000円 - 3,224,800円(売却費用) - 2,500,000円(概算取得費) = 44,275,200円

・不動産所得税
44,275,200円 - 30,000,000円(特別控除) × 20.315% = 2,900,006円

納税後手取り額
50,000,000円 - 3,444,800円(売却費用) - 2,900,006円(税金) = 43,655,194円

③相続した空き家(分譲マンション)を売却するケース

<条件>

■相続空家
・被相続人の居住用物件
・取得費3000万円(減価償却計算済み)
・所有期間5年以下
・被相続人名義
・担保権なし
・平成10年築

■物件売却価格
・5000万円
・荷物を処分して引渡しするという条件で売買

・被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例は適用できない。

 

項目 金額
仲介手数料 1,684,800円
印紙代 10,000円
司法書士費用 250,000円
相続登記費用220,000円含む
測量・境界確定 300,000円
小計 2,244,800円

(相続登記費用を除いた金額 2,024,000円)

【手取り額計算】

・不動産譲渡所得金額
50,000,000円 - 2,024,000円(売却費用) - 30,000,000円(取得費) = 17,976,000円

・不動産所得税
17,976,000円 × 39.63% = 7,123,888円

納税後手取り額
50,000,000円 - 2,244,000円(売却費用) - 7,123,888円(税金) = 40,632,112円

②、③のケースは相続物件を想定していますが、相続税は考慮していません。相続税は他の相続財産や負債、相続人の人数などによってかかるかかからないか、またいくらになるのかが決まります。

よく誤解されるのですが、「相続税」と「相続した不動産を売ったときに支払う譲渡税」は全く別物です。相続税と譲渡税のどちらかだけかかる、あるいはそのどちらもかからない、両方ともかかる、と様々なケースが想定されますので、あらかじめ税理士などに相談されることをおすすめします。

まとめ

さて、同じ金額(ここでは5000万円)の物件を売却したといっても、売却費用や納税額、手取り額は大きく異なることがお分かりいただけたでしょうか。

これらが余剰資金であれば多少の目減りは許容範囲かもしれません。しかし、手元にいくら残したい、というソロバン勘定の下で売却したとしたら、ずいぶん予定が狂ってしまうかもしれません。

5000万円で売却したら手数料などを引いても4800万円は残るだろう、と思っていても、実際にはそうはいかないこともあるのです(もちろん譲渡損が出て税金がかからないケースもあるでしょう)。

さらに注意したいのは、売却費用は売買契約から決済と同時期に支払うので忘れることはほとんどないでしょうが、税金はそうではないということです。売却した翌年の確定申告(2月後半~3月前半)の時期に所得税、復興特別所得税、5~6月に住民税を納付しなければなりません。決済が終わってまとまったお金が入ってきたと一安心するのはいいのですが、つい財布の紐が緩んで納税資金にまで手を付けると後で困ることになります。

ちなみに、譲渡益が出た場合は確定申告をしなければなりません。譲渡損の場合、確定申告は不要なのですが、譲渡損失を損益通算できる特例措置が適用できる場合には確定申告した方が有利になります。

要注意なのは、居住用財産の3000万円控除や相続財産の3000万円控除などを適用した結果として譲渡益がゼロ以下になるケースでは、特例を使いますという意味で確定申告が必要だという点です。これを怠ると、無申告のペナルティを受けるだけでなく、特例が適用できなくなりますので大損害が発生します。

以上、不動産を売却する際にかかるコストについての注意点をご紹介しました。文字数の関係で省略したり概要しか触れられなかったりした項目もありますので、各種特例の利用を検討される際は、あらかじめ詳細についてよく下調べするようにしましょう。また、実際に売却をお考えの際は、信頼できる税理士やFPに相談されることをオススメします。

著者情報

人物
氏名 田中裕晃(株式会社大峰 代表取締役)
職種 ファイナンシャルプランナー
専門分野 不動産相続に関する相談・提案
不動産投資に関する相談・提案
住宅購入に関するファイナンシャルプランニング
       保有資格 CFP(日本FP協会会員)、1級ファイナンシャルプランニング技能士、公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、マンション管理士、住宅ローンアドバイザー、賃貸不動産経営管理士、不動産キャリアパーソン、損害保険資格、証券外務員2種