資産運用初心者がiDeCoを始める前に知っておくべき運用の心得とは

日本FP協会の「くらしとお金に関する調査2018」によると、調査対象者全体の約7割の人が老後のくらしに「不安がある」と回答しました。世代別に見ると不安と回答する割合は高齢者よりも30代40代のほうが高い傾向にあるようです。

また、その内容は「老後の生活設計」が最も多く、資産寿命を延ばすためには、「長く働くこと」や「資産形成」が必要との回答が多くありました。資産形成という点なら、非常に有効な手段となるのがiDeCoです。

ところが、iDeCoをはじめたくても、なかなかはじめられない方は少なくありません。その理由は、資産運用への苦手意識です。iDeCoは資産運用をする制度のため、どうやってすればよいか分からないという方が多いのです。

そこで、資産運用初心者が安心してiDeCoをはじめられるよう、これだけは知っておきたいという資産運用のポイントをお伝えします。

iDeCoとは

iDeCoとは、自分で自分の年金を作る制度です。60歳まで積み立てを行い、積み立てたお金は、定期預金や投資信託で運用します。特徴としては、大きな税制優遇があり、基本的には、20歳以上60歳未満の方なら、誰でも始められるため加入者が急増しており、2019年4月現在、加入者は123万人になりました。

iDeCoは資産運用を行います。資産運用は、難しそう、損しそうといった理由で、なかなかiDeCoをはじめられなかったり、「よくわからないから」という理由で定期預金を選択したりする方は、少なくありません。

しかし、定期預金にも注意点があります。選択するにしても、これからご紹介する注意点を理解しておいたほうが良いでしょう。

iDeCoの運用商品と元本確保型商品の注意点

運用商品は大きく分けて2種類あります。1つは定期預金などの元本確保型商品、もう一つは、元本保証のない投資信託です。元本確保型には定期預金のほかに保険会社の個人年金などがあります。

iDeCo加入者の運用商品選択状況を見てみると、預貯金の割合が4割、保険商品の割合は2割となっており、資産全体の6割が元本確保型で運用されています。

しかし、ここで注意したいのは「元本確保」は「元本保証」とは違うということです。「元本確保」は満期が来て、初めて元本が確保されます。よって、満期が来る前に解約してしまうと、元本が割れる可能性があります。定期預金や損害保険の保険商品は、満期前に解約しても元本を割れることはありませんが、生命保険の保険商品は、満期前に解約すると元本割れする可能性があります。

特に、積み立てをしているなら、毎月新しい契約が成立するため、たとえ、積み立て当初の契約が満期を迎えたとしても、翌月以降の契約は、満期を迎えていません。保険商品で積み立ててきたお金を売却すると、満期前に解約してしまう可能性もあり、元本割れしてしまうこともあります。これは、中途解約のリスクであり、元本確保型にもリスクがあることを認識しておきましょう。

では、定期預金はどうでしょうか。iDeCoは口座管理手数料がかかります。その金額は、最低でも月額167円、年間だと2,004円です。2019年6月時点の定期預金の金利は、比較的高い銀行で0.05%です。毎月2万円を積み立てると、1年後の利息が55円です。明らかに、手数料の方が高いのです。

税制優遇の金額が大きいとはいえ、還付金は年末調整や確定申告で戻ってきますから、iDeCoの口座に入金されるわけではありません。つまり、定期預金で運用すると、実際に拠出した掛け金より、積み立て資産の方が少なくなってしまうことになります。

また、iDeCoは積み立て中も税制優遇があります。本来、運用益に対しては約20%の税金がかかりますが、iDeCoならその税金がかかりません。定期預金だとほとんど利息がつきませんから、せっかくのこの税制メリットを使えないことになります。

また、資産が増えないと老後資金不足問題は解決されないかもしれません。老後の資産形成のためにiDeCoをはじめたのに、その目的が達成されないかもしれないのです。

運用商品はいつでも変更でき、複数商品を組み合わせることもできます。投資信託と定期預金を組み合わせることも可能です。せっかくiDeCoをはじめるのであれば、一度、投資信託に目を向けてみることをお勧めします。

投資信託選びに大切な分散投資の考え方

とはいえ、やはり投資信託で運用することには、慣れていませんし、どの商品を選べば良いのかわかりません。そんな時に、知識として身に付けておきたい考え方が分散投資の考え方です。

分散投資とは、資産を複数の商品に分散させて投資をすることです。投資先は主に6種類あります。具体的には、日本の株式、日本の債券、海外の株式、海外の債券、日本の不動産、海外の不動産です。

分散投資が必要な理由は、大怪我をしない投資をするためです。ここで、6種類の投資先について、2016年から2018年まで、それぞれの代表的な指数のリターンを調べてみます(*1)。

2016年の年率リターン第1 位は、日本の不動産でした。しかし、翌年2017年、日本の不動産は最下位となってしまいました。その年の1位は海外の株式です。そして2018年の1位は、また日本の不動産でした。

このように毎年1位は変わります。さらに、1位と思ったら、翌年は最下位になるなど予測不能な動きをします。そして、2019年はどれが1位になるか誰にもわかりません。

ですから、1位を当てる必要はないのです。もし1位を当てられたとしても、日本の不動産のように、翌年は最下位になってしまうかもしれません。すると一気に資産がマイナス評価になってしまいます。

資産運用で損するイメージとは、まさにこのような頂上から谷底へ下落するイメージではないでしょうか。しかし、資産を分散させて投資を行えばこのような状況を回避できる可能性が高くなります。

分散させることによって平均的な利益を得ることを目指すのです。平均ですから、決して1位になることはありません。しかし、最下位になる可能性も低いでしょう。常に真ん中あたりに位置しているのです。

決して大きな収益は得られないけれど、大怪我をするリスクも小さくなります。このように、分散投資をすることが、安定的な収益を得る近道であり、資産運用初心者が知っておくべき、非常に重要な資産運用の心得なのです。

プロにおまかせバランスファンド

投資信託の中には、プロが分散投資を行ってくれる商品があります。それが、バランスファンドという投資信託です。バランスファンドには株式を多く組み入れたもの、債券を多く組み入れたもの、など中身は商品によって異なります。しかし、いずれにせよ、プロが投資のバランスを考えて運用してくれます。

ご自身がローリスクローリターンで運用したいなら、債券多めのバランスファンドが合っているでしょうし、ハイリスクハイリターンで運用したいなら株式多めのバランスファンドが合っているでしょう。ご自身のリスク許容度に応じて選んでみてください。

iDeCoは早めにはじめよう

iDeCoは、はじめることで税制優遇が受けられます。はじめなければ税制優遇を受けることができず、そのチャンスを逃していることになります。投資信託選びに時間をかけがちですが、運用商品はいつでも変更できます。悩んでいる間に月日はどんどん過ぎていきますから、まずは分散投資を実行し、スタートさせることからはじめてみてはいかがでしょうか。

(*1)
日本の債券:NOMURA-BPI 総合
日本の株式:TOPIX
海外の債券:FTSE/シティグループ 世界国債インデックス (除く日本 (円)
海外の株式: MSCI コクサイ・インデックス (KOKUSAI)
日本の不動産:東証REIT指数 (配当込み)
海外の不動産:S&P 先進国REIT指数 (除く日本)

著者情報

人物
氏名 前田 菜緒
職種 ファイナンシャルプランナー
専門分野 保険を販売しないからこそできる中立的な保険相談・資産運用(特に老後資産形成のための資産運用)
保有資格 CFP、1級ファイナンシャルプランナー、DCプランナー2級、公的保険アドバイザー、確定拠出年金相談ねっと認定FP、確定拠出年金ビジネスアカデミー会員