元銀行員が教える、高金利預金のカラクリと賢い利用法

低金利の時代が長く続いています。

円預金の金利は、1年定期でも0.01%程度。100万円預けても、1年間の利息は税引き後で79円にしかなりません。

そんな中、銀行の店舗やホームページを訪れると5%や6%の高金利に目がとまる商品があります。「外貨定期預金」と「退職金プラン」です。

高い金利には理由があります。

それは、銀行にとって「高い金利を払っても、儲かる商品」だからです。

普通より高い金利を払うということは、銀行にとって「持ち出し=損」になります。

損をカバーするために、銀行はどこで儲けているのでしょうか?

このカラクリが分かれば、銀行のワナにはまらず高金利預金を上手に利用する方法がみつかりそうです。

「外貨定期預金」と「退職金プラン」について、注意点と賢く利用するためのポイントを説明します。

「外貨定期預金」の注意点

例を出しましょう。実際に販売されている商品です。

■定期預金
期間:1カ月
金利:特別金利 年率6%(但し、円預金から定期預金を作成する場合のみ)
為替手数料(1ドル当り):預入時(円→ドル)0.50円
満期時(ドル→円)1.00円

皆さんが100万円持っていたとして、損益を計算してみましょう。

外貨商品ですので為替レートが関係します。為替レートの影響を含めない損益を確認したいので、預入時も満期時も1ドル=108円で変わらないとします。

まず、6%分の利息。

預入時に100万円をドルに交換する際の交換レートは為替手数料を入れて108.50円。

定期預金の金額は、100万円÷108.50≒9,200ドル。1か月分の利息は9,200ドル×6%÷12カ月≒46ドル、税引き後(税率20%)で37ドル=約4,000円が手取りの利息です。

一方で、この預金には為替手数料がかかります。

預入れ時に1ドルあたり0.50円なので、9,200x0.50円=4,600円。

ここで何か気づきませんか?

受け取る利息4,000円より払う手数料の方がすでに大きいですね

満期時に円に戻す際は1ドルあたり1円の手数料なので、9,200x1円=9,200円の手数料が更にかかります(細かくは利息分37ドルにもかかります)。

もう、カラクリはお分かりですね。

銀行は預入れ時に円からドルへの交換で4,600円の手数料を稼ぐことができるので、通常より高い金利を払っても確実に儲かる仕組みとなっています。

満期時に円に戻して貰えたら、更に儲けは多くなります。

満期時に為替レートが円安になれば、皆さんに利益が出ます。でも、これは預金として確実に貰える利益ではありません。円安だと利益ですが、円高だと損失になります。

つまり、この外貨定期預金は、銀行に手数料を払った上で1カ月の為替投資(投機?)をしているのと実は同じこと。為替投資なら、もっと手数料の安い方法があります。

「外貨定期預金」の賢い利用法

では、外貨定期預金は預けてはいけない商品でしょうか?

そうとは言えません。カラクリを分かった上で、賢く利用すれば良いのです。

鍵は「為替手数料」です。

5%や6%の高い金利は特別金利で、円からドルに交換して預入れることが条件です。預入れ時の為替手数料は必ずかかりますが、銀行によって料率は違います。

大手銀行は1ドルあたり0.50円前後ですが、ネット専用銀行では0.04円(住信SBI銀行)のところもあります。この料率だと、100万円預けても400円弱なので影響は限定的。

この差は大きいです。

為替手数料の安い銀行を選びましょう。

手数料を少なくする方法がもう一つあります。

満期時の為替手数料は、円に戻さなければかかりません。満期時にドル預金(普通預金、または定期預金)にすれば為替手数料はかかりません。

では、このドル預金は将来どうなるのでしょうか?

2つの活用方法を紹介します。

一つ目は、中長期の資産運用として考える方法です。

ドル建て資産を一定額保有しておくことは運用資産の分散という点で有効です。円に比べて金利が高いのも魅力。ネット専用銀行では1~2カ月の通常の定期預金で年率2%程度の金利を出しているところもあります。円預金よりも大分有利ですね。

米国が世界経済の中心であることを考えれば、ドル建て資産を一定割合保有することはリスク分散にもなります。

最終的には円に戻すので為替手数料はいずれかかりますが、1カ月間で9,200円払うのに比べ、数年間運用した後に9,200円払うのだと時間あたりのコストは大幅に安くなります。

二つ目は、海外旅行で使う方法です。

海外旅行の予定があれば、早めドル預金にしておくのも手です。金利が高いので、旅行までに利息を多く稼ぐことも出来ます。

ソニー銀行では、決済口座をドル普通預金に設定できるデビットとクレジットの機能を合わせたカード(Sony Bank WALLET)を発行しています。海外のATMで現金の引き出しも可能。海外旅行でドル預金を有効に活用できそうです。

「退職金プラン」の注意点

退職金プランは退職金に限定した運用商品で、円定期預金と投資信託がセットになっているのが一般的です。

例をみましょう。これも大手銀行で実際に販売している商品です。

運用金額:500万円以上(半分を3ヵ月円定期預金、半分を投資信託購入)
預金金利:年率6%
投資信託:対象の投資信託より選択

円定期預金は期間3ヵ月が多く、5%や6%の高金利をセールスポイントにしています

銀行にとっては、通常より高い金利を払うことになり「持ち出し=損」です。

では、銀行はどこで儲けているのでしょうか?

退職金プランですが、金額の一定割合(50%が多い)で投資信託購入という仕組みが一般的です。金額も最低金額が設定されていて、定期と投資信託合計で500万円以上というのが一般的です。

もう、気付きましたか?

銀行は投資信託の販売で手数料を稼ぎ、持ち出し分をカバーしています。。

確認してみましょう。

運用金額:退職金の内1,000万円
定期預金:500万円 年率6%
投資信託:500万円

まず、6%分の利息です。

500万円x6%÷12カ月x3ヵ月=75,000円、税引き後(税率20%)で約6万円です。

一方、払う手数料はいくらでしょうか?

投資信託に投資する際にかかる主な手数料は「申込手数料」と「信託報酬」です。(「信託財産留保額」もありますが、一般的に少額なのでここでは除きます。)

申込手数料は購入時にかかる販売手数料で、購入金額に対して1%から3%程度です。

信託報酬は、投資信託の保有期間中はずっとかかる運用・管理手数料で、残高に対し年率1%程度から2.5%程度です。

申込手数料2.0%+信託報酬1.5%のケースを考えてみましょう。

定期預金期間3か月の間に払う手数料は次の通りです。

申込手数料:500万円×2%=10万円
信託報酬:500万円×1.5%÷12カ月×3ヵ月≒2万円

合計で約12万円、利息6万円の2倍の手数料を払うことになります。

申込手数料10万円は全額銀行の取り分なので、高い金利を払っても十分に儲けが出る仕組みです。(信託報酬は委託会社等と分配)

退職金プランの賢い利用法

投資信託とのセットプランでは、高金利の利息を投資信託の手数料で失うことになります。

投資信託の価格が上がれば儲けは出ますが、価格が下がれば利息分は手数料で失った上に、投資信託の損で元手が減る可能性があります。

リタイア後の生活の支えとなる退職金の運用としては賢い方法とはいえません。

投資経験の有る・無し別に、お勧めの利用法をご紹介します。

株や投資信託での投資経験がある方:
投資信託とのセットプランの利用もアリですが、①最低金額で利用する、②投資信託を時間かけて選ぶ、の2点を注意してください。

利用金額は退職金の一部とし、投資信託は安定・バランスを重視し数年は保有するつもりで商品を選んでください。申込手数料と信託報酬の料率の確認も大事です。手数料率の安い投信信託ほど、安定・バランス重視型という傾向があります。株式中心に運用する投資信託だと株価指数に連動するインデックス型などです。

投資経験がない方:
投資信託とのセットプランの利用は避け、定期預金だけの退職金プランを探しましょう。

セットプランに比べると金利は低くなりますが、通常の定期預金に比べると高い金利がつきます。大手銀行では、三井住友信託銀行が3ヵ月・年利1%、りそな銀行が3ヵ月・年利0.5%という退職金専用の定期預金を出しています。

退職金を受け取ってから一定期間(1年~2年程度)は利用できるケースが多いので、A銀行に3ヵ月預けて満期になったら次にB銀行に3ヵ月、Bで満期になったら次はC銀行に3ヵ月と銀行を変えて継続すれば、暫くは特別金利のメリットを最大限得ることが出来ます。

まとめ:手数料を確認して下さい!

低金利だと銀行は貸出で収益を伸ばすことが出来ません。

手数料で稼ぐ方法を、知恵を絞って考えています。

外貨定期預金や退職金プランに限らず、銀行の商品を利用する際は手数料を十分確認してください。高い預金金利や低いローン金利は大きく表示してありますが、手数料の説明は目立たないことが多いです。手数料の種類と金額について、納得できるまで担当者に質問してみることをお勧めします。

手数料が複雑で簡単には理解できない商品も最近は多くあります。例えば、ラップ口座。

まとまった金額の取引をする際は、事前にファイナンシャル・プランナー等の専門家に相談してみるのも良いでしょう。

著者情報

人物
氏名 岩上敏秀(いわかみFP事務所 代表)
職種 ファイナンシャルプランナー
専門分野 金融リテラシー教育
資産運用
リタイアメント・プランニング
シニアの住み替え
保有資格 1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者、
日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)