知っておきたい災害と生活再建とお金

自然災害大国と言われる日本は、どの地域にいても地震などの自然災害に見舞われる可能性があります。「非常持ち出し袋」の準備や、家族間の連絡方法や避難場所の確認など、防災対策は私たち一人ひとり、また各家庭や職場での備えが大切です。

一方で、ついつい「何とかなるさ」と後回しにしがちなのが、お金に関わる情報です。そこで、万が一災害に見舞われた際の生活再建や維持に役立つ情報についてご紹介します。

日ごろの備え

(1)非常時の生活費を準備

3・6・12か月分など各家庭の状況に応じて準備するとよいでしょう。

(2) 携帯用財産記録を作成

銀行・証券・保険・ローンなどの取扱会社の連絡先などを携帯用にまとめておきましょう。

(3)非常時用のお金

100円玉などの小銭や1,000円札を非常時用に2~5万円程度いつでも持ち出せるようしておきましょう。

(4)火災保険や自動車保険、生命保険などの補償内容を定期的に確認

内容で不明な個所があれば、代理店や保険会社に問い合わせてみましょう。

被災時にまずやるべきこと

(1)被害状況を写真に残す

これはかなり重要です。なぜなら、被害認定や保険会社の認定を受けるのに、片づけなどが終わってしまっていては、実際の被害の把握ができないからです。正しく認定を受けるためにも、可能な限りたくさんの記録写真を撮りましょう。できれば、全体がわかる写真と、細部の被害状況(部分)がわかる写真、正面だけでなくあらゆる角度から、大きさが分かるような写真があるといいですね。

(2)罹災(りさい)証明書と被災証明書

  • 罹災(りさい)証明書

住居の災害による被害程度(全壊、大規模半壊、半壊など)を、自治体の職員が現地調査を行い認定するもので、市町村長が交付します。

被災者生活再建支援金や義援金、災害援護資金などの給付や融資を受けたり、損害保険の請求、仮設住宅への入居、固定資産税などの地方税や所得税、健康保険などの社会保険料、公共料金等の減免・猶予を受けるために、必要な重要書類です。

  • 被災証明書

自然災害による物件等の被害について写真等で確認し、被災者から被災の届出があった旨を証明するものです。このため、「住宅被害認定調査」は行わず、被害程度についても判定しません。

所得税の確定申告や次年度の市民税・都民税の申告で雑損控除をする際、または勤務先への申請、損害保険金の請求に必要となります。

どちらの証明も災害で被害を受けたら、早急にお住まいの各市区町村へ届け出を行いましょう。

汚れたり壊れた現金

泥などで汚れた紙幣は、水でそっと洗い、できれば乾かして、銀行に持っていきます。破損している場合、紙幣の面積が2/3以上残っていれば額面の全額分と、2/5以上2/3未満残っていれば額面の半額分の新しい紙幣と交換してもらえます。2/5未満は、残念ながら交換できません。それに、灰になっても紙幣と確認できれば有効ですので、できるだけ原型を崩さないようにして容器などに入れて提出するとよいでしょう。加えて、溶けた硬貨は重さで判別されますので、塊のまま銀行へ持っていくことをおすすめします。

銀行などの預金の引き出し

大規模な自然災害の被災地においては、金融機関も柔軟に対応してくれます。通帳や印鑑、キャッシュカードがなくても、本人確認さえできれば、預金の引き出しに応じてくれます。

たとえば、都市銀行や地方銀行では10~20万円、ゆうちょ銀行では20万円まで引き出せます。

本人確認資料は、運転免許証やマイナンバーカードなど顔写真入りのものです。また、本人確認資料がない場合でも、自分の預金口座番号とおおよその残高、取引履歴をおぼえておくと柔軟な対応が期待できます。

クレジットカードの紛失

紛失したら、盗難などのおそれもありますので、なるべく早くカード会社に電話をすることです。スマホの電話帳に窓口の電話番号やカード番号、有効期限そして別にセキュリティーコードを入力しておくと便利です。また、クレジットカードの多数所有は紛失・盗難にあってもわからなくなるなどリスクが増えます。この機会に、枚数を整理することをおすすめします。

医療保険証の紛失と保険診療

健康保険証がなくても、災害救助法の適用地域では、保険医療機関(病院、診療所、保険薬局など)で、通常の保険医療と同様に1~3割負担で治療や投薬が受けられます。その際、医療機関に対し伝える情報としては、氏名・生年月日、住所、連絡先、加入している医療保険種類(国民健保・組合健保・協会健保)などです。

また、避難別に開設される救護所での応急処置、または巡回健康相談を受ける費用は不要です。さらに、健康保険証を悪用されることを防ぐために、遺失届と再発行手続きを、国民健康保険は各自治体で、会社員・公務員の方は勤務先で済ませておきましょう。

損害保険や生命保険の証券紛失

いざという時のためにかけているのが保険です。しかし、保険証券を紛失しまってはどうしようもありません。その場合は、取扱代理店や保険会社に連絡し、保険契約を確認する必要があります。災害救助法が適用された地域で、契約先がわからないという場合は、「自然災害等損保契約照会センター」(フリーダイヤル 0120-501331)に連絡してください。受付から連絡までに、2週間程度の時間がかかりますが、センターが契約先を調べてくれます。また生命保険についても、「災害地域生保契約照会センター」(フリーダイヤル 0120-001731)が同様のサービスを行っています。なお、サービスを受けられるのは、被災された方(ご本人)と親族(配偶者・親・子・兄弟姉妹)に限られます。

住宅ローンや自動車ローンの返済困難

住宅ローンを借りている個人の方や、事業に必要な資金を借りている個人事業主の方で、自然災害の影響によって災害前の借入の返済が困難となった方は、「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」を利用することにより、破産手続などの法的な手続によらず、債務の免除等を受けられます。

この債務整理のメリットは次の通りです。

(1)財産の一部を、ローンの支払に充てずに、手元に残すことができます。

(2)破産等の手続とは異なり、債務整理をしたことは、個人信用情報として登録されないため、その後の新たな借入に影響が及びません。

(3)国の補助により弁護士等の「登録支援専門家」による手続支援を無料で受けることができます。

あくまでガイドラインであり、ローンの借入先との交渉によって決められます。

公的な支援金と融資

 (1)災害弔慰金・災害傷害見舞金(給付)

災害により死亡された方のご遺族に対して、災害弔慰金(生計維持者:500万円、生計維持者以外:250万円)が、災害による負傷、疾病で精神又は身体に著しい障害が出た場合、災害障害見舞金(生計維持者:250万円、生計維持者以外:125万円)が支給されます。(いずれも市町村条例で定める額)

 (2)被災者生活再建支援制度(給付)

災害により住居する住宅が全壊するなど、生活基盤に著しい被害を受けた世帯に対して当座の生活のための支援金が支給されます。

(3)住宅応急修理支援制度(給付)

仮設住宅に入らず、今の住宅を修繕して避難せずに暮らす被災者に対する給付制度です。修理工事前の申請が基本ですから注意しましょう。

(4)災害援護資金(貸付(融資))

世帯主が災害により負傷、または住居・家財に被害を受けた世帯に再建資金が貸し付けられます。ただし、所得制限と融資限度額(350万円)があります。

いずれも、市町村に問い合わせの制度です。ほかにも社会福祉協議会やハローワーク、日本政策金融公庫に問い合わせる給付や貸付があります。

自動車の活用と流失

自動車を上手に活用するために、ガソリンはこまめに給油しておきましょう。また、車内でスマホやタブレットなどの充電ができればいざという時助かりますね。

自動車保険に車両保険がついている場合、水害や台風などで被害にあった時、保険金が支払われます。また地震・噴火・津波危険担保特約がついていれば地震の時にも保険金が支払われます。さらに、車が流された場合などの登録抹消は、罹災証明書があれば通常の廃車手続きと同様です。

スマートフォンの活用

災害時は、現在の正確な情報を入手することが大事になります。スマホやタブレットが使えれば災害情報をチェックでき、より安全な避難所までのルートを見つけることができます。また、被害状況の記録写真の撮影、自治体の経済的な支援策の検索やなどにも役に立ちます。さらに「非常持ち出し袋」の中に、手回しや太陽光などでモバイルバッテリーを充電できるような装置を準備しておくとより安心です。

災害救助法で国や自治体などの支援制度は整いつつあるものの、「自分で請求の手続きをしないと何ももらえない」自己申請が原則です。また、けがや病気で動けない時や高齢で手続きに出向けない時は、委任状の添付で代理人による手続きが可能です。

さらに、ライフライン業者を装った請求詐欺や、保険会社や自治体の被害認定に必要などと偽り高額診断料請求など、被災者を狙う犯罪や詐欺にも気を付けたいものです。

著者情報

人物
氏名 京極 佐和野(FPオフィス ミラボ 代表)
職種 ファイナンシャル・プランナー、キャリアコンサルタント
専門分野

セカンドライフに係わるファイナンシャルプランニングの相談・提案

(住宅ローン見直し、資産形成・運用、住宅・教育資金、離婚・死別での生活設計、相続前後対策)

保有資格 ファイナンシャル・プランナー(CFP®)、キャリアコンサルタント(CDA)、
2種証券外務員、住宅ローンアドバイザー、金融教育支援員、ラジオ体操指導員、
スカラシップアドバイザー(日本学生支援機構認定、平成29年・30年・31年)