子どもに必要な教育費の目安と具体的な貯め方をFPが解説

私はファイナンシャルプランナーとして、子育て世帯を中心に3000件を超える家計相談を受けてきました。

一般的なサラリーマン家庭のキャッシュフロー表(数十年先までの家計収支と手元のお金の残高シミュレーション)を作成してみると、子どもの進路を中学から大学まで私立と想定した世帯だけでなく、公立の小・中・高から私立大学と想定した世帯でも、末子が大学を卒業する前には貯蓄が底をついてしまうことが少なくありません。

給与の大幅な伸びが見込み難い日本の現在の社会状況では、できる限り長期のスパンで教育費を準備する必要があります。この記事では、子どもが生まれたら早めに行いたい、教育費の目安の把握、貯蓄の計画、そして具体的な貯蓄の方法を紹介していきます。

子どもに必要な教育費の目安

まずは計画的に教育費を用意するために、教育費がどの程度かかるのかを把握しましょう。幼稚園から高校までの教育費の平均値を次の表に示しました。

【子どもに必要な教育費の目安】
公立 私立
幼稚園 学校教育費 ¥120,738 ¥331,378
学校給食費 ¥19,014 ¥30,880
学校外活動費 ¥83,895 ¥165,658
年間平均 ¥223,647 ¥527,916
総額(3年間) ¥670,941 ¥1,583,748
(月あたり) ¥18,637 ¥43,993
小学校 学校教育費 ¥63,102 ¥904,164
学校給食費 ¥43,728 ¥47,638
学校外活動費 ¥214,451 ¥646,889
年間平均 ¥321,281 ¥1,598,691
総額(6年間) ¥1,924,383 ¥9,215,345
(月あたり) ¥26,728 ¥127,991
中学校 学校教育費 ¥138,961 ¥1,071,438
学校給食費 ¥42,945 ¥3,731
学校外活動費 ¥306,491 ¥331,264
年間平均 ¥488,397 ¥1,406,433
総額(3年間) ¥1,444,824 ¥4,017,303
(月あたり) ¥40,134 ¥111,592
高等学校 学校教育費 ¥280,487 ¥719,051
学校外活動費 ¥176,893 ¥250,860
年間平均 ¥457,380 ¥969,911
総額(3年間) ¥1,226,823 ¥2,973,792
(月あたり) ¥34,078 ¥82,605
総額(15年間) ¥5,266,971 ¥17,790,188

参照元:文部科学省「子どもの学習費調査(平成30年度)」

学校教育費とは、学校教育を受けるために支出した費用で、授業料・入学金・学用品費・通学用品費などのことです。学校外活動費には、家庭教師・通信教育・学習塾の費用から、けいこごと・スポーツ・文化活動などの費用も含みます。

何百万円という金額を見ても実感が湧き難いため、月当たりの金額で把握するのも1つの方法です。例えば、公立小学校において6年間の教育費総額は約192万4千円であるため、72か月で割ると、月あたり約2万7千円となります。

同様に月あたりの金額を計算すると、公立中学で約4万円、私立中学で約11万2千円、公立高校で約3万4千円、私立高校で約8万3千円と計算できるので試してみてください。

大学の教育費も用意しておきたい

子どもの大学・短大進学率は58.1%、大学だけでも53.7%に達しているため(文部科学省「学校基本調査(令和元年度 確定値)」)、大学の教育費の目安も把握しておきましょう。大学の教育費について、私立と国立、自宅と自宅外で分類した平均値を以下に示します。

【大学(昼間部)の学生生活費(学費と生活費の合計)】
国立/自宅 112万2,300円(4年間=448万9,200円)
国立/自宅外 176万5,800円(4年間=706万3,200円)
私立/自宅 181万 800円(4年間=724万3,200円)
私立/自宅外 249万5,300円(4年間=998万1,200円)

参照元:日本学生支援機構「学生生活調査結果(平成30年度)」

これらの金額には、生活費として食費や娯楽・し好費なども含まれていますので、大学生の子どもがアルバイトなどで賄える部分もあると思われます。実際にこの調査でも、大学(昼間部)の学生はアルバイトで年額平均40万1,500円の収入を得ていました。

これら学生生活費の全額を用意しなくてもよい可能性は高いですが、学部などによっては課題が多く、アルバイトに時間をあまり割けないということもあるでしょう。準備する金額の目安としては、やはり上の表の金額を意識しておきたいですね。

令和元年10月より「幼児教育・保育の無償化」が開始された

「幼児教育・保育の無償化」が令和元年10月より開始されましたが、前出の表で示していた幼稚園の平均値は平成30年の実績なので、まだ反映されていません。これから子どもの教育費を用意する人は、無償化のポイントを確認しておきましょう。

【幼児教育・保育の無償化のポイント】
  • 幼稚園、保育所、認定こども園などを利用する3歳~5歳の子どもの利用料が無償化
  • 幼稚園については、月額2万5,700円まで無償
  • 幼稚園の預かり保育を利用する子どもが、保育の必要性の認定を受けた場合、幼稚園の上限月額2万5,700円に加え、最大月額1万1,300円が無償
  • 認可外保育施設等は「保育の必要性の認定」を受けた場合、月額3万7千円まで無償
  • 無償化の期間は、満3歳になった後の4月1日から小学校入学前までの3年間
  • 幼稚園は入園できる時期に合わせて、満3歳から無償化
  • 0歳~2歳の子どもは、利用料の無償化の対象となるのは住民税非課税世帯のみ

3歳~5歳の子どもに関しては、保育所の利用料は無償化されるなど、前出の表の幼稚園の総額よりもかなり少なくなりそうです。一方、0歳~2歳の子どもが保育所などに通う場合は、無償化の対象となる世帯が限定的なため、その期間の保育料を考慮しておく必要があります。

なお、保育料は自治体によって金額が異なり、住民税の金額によって階層別に定められているため、世帯によってかなり異なります。ここでは東京都新宿区の例を挙げます。

【令和2年度 保育所の基本保育料(東京都新宿区)】
第1子 3万5,700円
第2子 1万7,850円
第3子以降 無償

※0歳~2歳児、保育標準時間、世帯の住民税の額29万円以上30万円未満を想定
参照元:新宿区ホームページ「幼稚園・保育園・子ども園等の保育料について(保育料表 区立・私立保育園及び認定こども園 令和2年度)」

共稼ぎ世帯など0歳~2歳児も保育所の利用を想定する人は、各自治体のホームページで、予想される保育料を確認しておきましょう。

教育費の貯蓄計画を立てるポイント

教育資金計画を立てるうえで最初にすることは子どもの進路の想定ですが、子どもがまだ幼いときに具体的な進路を想定することは難しいです。

現時点で強い進路の希望がなければ、小・中学校は公立、高校は私立、大学は私立の自宅通学と想定して資金計画を立てておくとよいでしょう。この進路想定をしておけば、例えば中学校が私立になった場合の教育費増加額は約257万円、大学が私立の自宅外通学になったときの増加額は約202万円と、極端な計画との差を防ぐことができるためです。

小・中学校は公立、高校は私立、大学は私立の自宅通学とした場合の合計額は約634万円です。これに保育料として0歳~2歳は月3万5千円、3歳~5歳は月2万円を想定した6年間の総額198万円を加え、合計832万円がこの想定による高校までの教育費総額ということになります。

高校までの教育費の予算を月4万円とすると18年間の合計は864万円。毎月4万円から残った分を貯めていけば、私立高校の費用をカバーして少しだけ残る計算です。

具体的には、子どもが生まれたらすぐに教育費専用の銀行口座を作り、毎月4万円を移動します。全ての教育費はその口座から使い、残った分は貯めておくと、中学卒業時には約185万円が貯まっていることになります。

私立高校に入学する時にはその口座から入学金等を支払い、毎月4万円をその口座に移すことを続けると残高は毎月平均で約4.3万円ずつ減っていきますが、高校卒業時まで残高は残りますので管理がし易いでしょう。

大学の教育費は実際の支出までが長い

大学の教育費は実際に支出するまでの期間が長く、貯蓄期間を長くとることができます。

大学在学中もそれまでと同様に月4万円を教育費に充てると、4年間の総額は192万円となります。そして、例えば私立大学で自宅通学の4年間の総額は、約724万円から192万円を差し引いた約532万円が18歳の時の目標貯蓄額となるのです。

誕生直後から貯蓄を開始した場合、利息などを考えないと必要な貯蓄額は月約2万5千円、年約30万円となります。大学費用については、毎月4万円の高校までの教育費予算とは別に、毎月2.5万円を貯めていくようにしましょう。

教育費を貯める方法

目標額が決まったら、具体的に教育費を貯める方法を考えましょう。

【教育費を貯める方法】
教育費を貯める方法 特徴
定期預金 あらかじめ銀行と預入期間を約束することで、普通預金より高い金利で貯金できる
財形貯金(一般財形貯金) 勤務先の協力を得て、毎月の賃金から天引きで貯金できる
学資保険 子どもの入学や進学に合わせて祝金や満期保険金が受け取れる
つみたてNISA 運用益が課税されず、教育費を準備できる

ここからは、代表的な教育費を貯める方法をチェックしていきます。

定期預金

定期預金とは、あらかじめ銀行と預入期間を約束することで、普通預金よりも高い金利を受け取ることができる預金です。毎月の指定日に一定額を自動的に積み立てるタイプもあります。

現在、都市銀行などでは金利がほとんどつかない状況ですが、いつでも必要なときに使える資金として、前述した毎月の教育費予算で残った分を貯めておくのによいでしょう。

財形貯金(一般財形貯金)

財形貯蓄とは、勤労者が勤務先の協力を得て賃金から天引きで行う貯蓄のことです。

一般財形貯蓄・財形年金貯蓄・財形住宅貯蓄の3種類がありますが、教育資金であれば、資金の目的が決められていない一般財形貯蓄を利用しましょう。

定期預金と同様、金利がほとんどつかない状況ですが、補助制度のある企業もありますので、勤務先の制度を調べてみるとよいでしょう。

また、貯蓄が苦手という人にとっては、給与からの天引きはとても効率的な貯蓄方法といえます。大学の教育費などを貯める方法として、財形貯金は有力な選択肢です。

学資保険

学資保険とは、子どもの入学や進学に合わせて祝金や満期保険金が受け取れる保険商品です。原則として親が契約者、子どもが被保険者になって契約し、契約者が死亡した場合にはそれ以後の保険料払い込みが免除されるものがほとんどです。

低金利が長く続き、学資保険では受け取れる金額が以前ほど増えなくなっています。加入するのであれば、保険料の総支払額と学資金・満期金などの受け取り総額を比較し、少なくとも元本割れがない商品を選びましょう。

加入した時点でその後の増え方が決まってしまう商品のため、低金利な2020年現在においては、学資保険は加入に適しているとは言い難い商品です。

つみたてNISA

つみたてNISAとは、2018年1月からスタートされた投資の運用益の非課税制度です。対象商品は、手数料が低水準、頻繁に分配金が支払われないなど、長期・積立・分散投資に適した投資信託に限定されており、投資初心者も利用しやすい仕組みです。毎年40万円まで投資信託を購入し20年以内に売却すれば、運用益が課税されないのが大きなメリットです。

ただし、投資信託は価格変動リスクがあるため、リスクを軽減する下記の考え方を意識しておきましょう。

【金融庁が公表した投資のリスクの軽減方法の例】

長期・積立・分散投資による効果は、積立が長期であればあるほど、投資先を分散すればするほど、収益がバラつきにくくなる特徴がある。(中略)リスクをコントロールし、一定のリターンをもたらしやすい点で、多くの人にとって好ましい資産形成のやり方であると考えられる。

引用元:金融庁 金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理(令和元年)」

毎月少しずつ可能な限り長期間、投資信託を購入し続けること、投資信託は様々な種類の資産に1つで分散投資ができる「バランス型」の投資信託を選ぶことにより、この考え方をつみたてNISAでも実践できます。

運用期間を長く確保するのに、少なくとも10年間は取り崩さないことが望ましいため、つみたてNISAは大学費用を貯めるのに向いていると言えるでしょう。

まとめ

教育費の目安や貯蓄計画の立て方、4つの代表的な貯め方を紹介してきましたが、教育費対策は長期戦です。子どもの進路が当初の想定と大きく変わってしまうこともあるでしょうし、貯める方法も学資保険のようにタイミングにより有利不利が変わることもあります。

計画をしっかり立てることは重要ですが、それと同じ程度に、進路の変更に合わせた継続的な見直しが重要です。状況によっては奨学金や教育ローンの利用も選択肢となります。

日本学生支援機構(JASSO)の奨学金や都道府県等の奨学金(主に高校)、日本政策金融公庫が行う「国の教育ローン」などについても理解を深めておくとよいでしょう。

著者情報

人物 プロフィール画像_平野様
氏名 平野雅章(横浜FP事務所 代表、全国ファイナンシャルプランナー相談協会 代表理事)
職種 ファイナンシャルプランナー
専門分野 ■家計相談
主に住宅資金計画、住宅ローン、生命保険、火災・地震保険、iDeCoおよびNISA、ライフプランを中心に有料相談3,000件超の実績あり
■講師
主なテーマは住宅購入、生命保険、火災・地震保険、老後資金計画。
主な実績:
横浜銀行、TBSハウジング渋谷、スウェーデンハウス、SOMPOひまわり生命、日本ユニシス労働組合、地域社会ライフプラン協会など
神奈川県立産業技術短期大学校で非常勤講師も務めている
■メディア出演・監修・執筆
主な実績:
日本テレビ「スッキリ」、フジテレビ「とくダネ!」、ニッポン放送「夕暮れWONDER4」
読売新聞、日本経済新聞、朝日新聞、毎日新聞、産経新聞、東京新聞、
週刊ダイヤモンド、週刊東洋経済、週刊エコノミスト、週刊朝日、日経トレンディ―、
日経WOMAN、AERA、サンデー毎日、週刊文春、週刊現代など掲載100紙/誌超
保有資格 CFP®認定者
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
住宅ローンアドバイザー
日本学生支援機構スカラシップアドバイザー